[寸評]
珍しい、ネイリストを主人公にした小説。
ネイル全般について作者は徹底的に取材したらしく、ネイルの施術・技法などが非常に詳しく、かつ丁寧に描かれており、まさに王道の“お仕事”小説になっている。
それはそれで興味深く読んだが、一方、物語の面白さという点では、登場人物誰もが毒の無い人たちによる終始静かな展開で、もうちょっと紆余曲折というか派手な場面やドタバタがあってもよかったのに、と感じた。
予想通りに話は進み、意外性なく落ち着いたという印象だ。
[導入部]
東京の私鉄沿線、弥生新町駅前の商店街で、月島美佐がネイルサロン「月と星」を開いたのは四年前。
施術用の椅子は二つ、ネイリストは現在月島のみという小さな店だが、常連客もそれなりについて、売り上げは安定している。
入居している木造長屋は一階に二軒の店舗が入っている。
駅寄りが「月と星」、角がわが居酒屋「あと一杯」で、居酒屋は五十がらみの松永という男が一人で切り盛りしていた。
松永はどうもネイルに偏見があるらしい。
[採点] ☆☆☆★
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