[寸評]
二十九歳のそば屋店主と周りの人々との交流を描く。
出前もするそば屋のなんと言うこともない日常が描かれて、いかにも小野寺史宜らしい、安定のハートウォーミングな作品ではある。
もともと作者の諸作は会話が多かったが、それにしても本作は会話場面がさらに多い。
会話でなければ主人公の独白。
こんなに人って喋るの、というか、アラサーの男と高校生の男子とか中学生の女子がこんなに喋るだろうかと思ってしまった。
悪くいえば、ちょっと書き流している感じがしました。
二十歳の大学生ニーナとサイモンは恋人同士。
サイモンの両親が持つ郊外の別荘に二人で出かけた。
ニーナは土曜日の朝には帰宅するはずが、日曜日の午後になっても帰ってこなかった。
ニーナの母親リアンが携帯に電話をしても応答がない。
父親のアンディがガソリンスタンドの店員から、サイモンは金曜日の夜にひとりで家に帰ってきたという話を聞いてきた。
心配になったニーナの両親はサイモンの家に向かうが、彼の母親から冷たくあしらわれる。
[寸評]
休暇に別荘に行った恋人同士の二人だが、帰ってきたのは男だけ。
果たしてニーナに何があったのか。
疑惑は膨らんでいくが、意外や、物語の半分にもいかないくらいでニーナがどうなったかは明らかになってしまう。
この後いったいどうなるやらと思ったが、予想を超えた展開で最後までしっかり読み手をつかんで離さない。
サイモンの両親がネットでニーナ側へのネガティブキャンペーンを張るのがいかにも現代的だ。
ブラックな落ちは日本の作品にはなかなか無いものと感じた。
[寸評]
50〜90頁ほどの不気味な奇想短編4編。
特急列車の網ダナの上を定位置にしている霊魂だとか、サンタクロース(紛い?)から“殺されても死なない命”をもらった男、インドから出られない旅行者などが登場する。
読んでいてなんだかそわそわ落ち着かない感じになる奇妙な作品集で、ちょっぴりユーモアも感じさせる怪作揃い。
途中で話が急に切り替わったりしてちょっと混乱する作品もあったが、中ではお仕事小説的で奇想度は低い表題作「ティータイム」が最も良かったかな。
[導入部]
蜜葉市みつばの住宅地にある、そば『ささはら』。
店主は笹原鳴樹。
もともと店は鳴樹の父がやっていた。
鳴樹は大学を卒業し、店を継ぐことなく厨房機器販売会社に就職。
しばらくして父は心疾患で亡くなり、そば『笹原』は閉店。
そして今から一年前に母も肺炎で亡くなった。
会社が異動時期だった鳴樹は、六年勤めた会社を辞め実家に戻り、そして気づいた。
そば屋、やるしかないんじゃね。
学生の頃、そばのあれこれを半年ほど親父に習っていた。
[採点] ☆☆☆
[導入部]
[採点] ☆☆☆☆
[導入部]
だだっ広い大宴会場で明里は小皿にお新香をつけていた。
朝のお新香つけは新米ルーム係の仕事だ。
高原の温泉地として誰もが名を知る北関東の温泉の中堅老舗旅館に明里がやってきたのは一か月ほど前。
都会の街の交差点の街頭ビジョンに映った旅館のコマーシャルの後に求人情報が入り、明里は電話番号をメモし、翌日にはここにいた。
ルーム係は明里以外はベテラン揃いだ。
番頭は十名近くいるが、揃いも揃って無能なことかぎりない。(表題作)
[採点] ☆☆☆★
ホームページに戻る