[寸評]
フリーライターが戦後まもなく起きた連続殺人事件の犯人の女の足跡を辿っていく現在パートと、東京大空襲から敗戦と混乱の極みの中で後に北川フサと行動を共にする少年・靖男を描くパートの二軸で物語は進む。
とりわけ孤児たちが必死に生きようとする過去パートは読ませるが、今までに同じような話を読んだこともあり、今ひとつ感興が湧かない題材だった。
若い人たちには読んでほしいが。
また、終盤語られる海老原の死んだ妻の過去の行いの話は必要だったのか、疑問に感じた。
カイウス・ボーシャンはロンドン警視庁警部。
彼は小規模な前衛劇場の席に座っていた。
パナマ帽をかぶった男が壁際の席に座っている。
演目はオスカー・ワイルドの喜劇のパロディー。
デート相手のローラはバス渋滞に引っかかり来ないことになった。
カイウスと男の間には趣味のいい帽子をかぶったキャリーという女性が座った。
舞台の途中、俳優が嘔吐し、キャリーの隣の男に吐瀉物がかかったが、かけられた男は何の反応もせず生気がなかった。
[寸評]
英国上流階級の中で起こる事件の捜査を描くミステリー。
事件は複数で、ボーシャン警部のチームによる捜査を丹念になぞり、合わせて特権階級の生態、警部の恋愛なども絡ませて物語は進む。
しかしちょっと長いかな。
登場人物も多くて、記されるのが本名だったり愛称だったり、読書中、登場人物表とにらめっこ状態。
ボーシャンと絡むキャリーの奔放さにも戸惑った。
エドガー賞受賞作で英語圏の読者には好まれそうだが、上手く物語の波に乗れず、さほど感心しなかったな。
[寸評]
直木賞受賞作。
図書館予約数が半端ないので購入。
大正末期から昭和の終戦後まもなくまでの時代を生きたカフェーの女給たちを主人公に据えた連作五話。
激動の時代、笑い、泣き、悩みながら市井をたくましく生きる女性たちの日常が、ほのかなユーモアを交え生き生きと描かれている。
床屋の男と女給を描く三作目「出戻りセイ」の余韻がたまらないし、歴代の女給が勢揃いするような最終話もよくできている。
どれもこれという展開はないが、しみじみいい話を読んだという気持ち。
[寸評]
高校女子陸上部ランナーたちを描く青春スポーツ群像小説。
中心に描かれる種目は、個人競技が主の陸上の中でも数少ないチーム競技の4×100mリレー。
主要登場人物5人が交互に語っていく構成で、リズム良く話は進む。
悩み多き少女らの心情はしっかり描かれている。
470ページはさすがに長さを感じさせるが、クライマックスの決勝レース場面のカットバックは見事。
ユルいエッセイの多かった宮田珠己が小説を書いたのには驚かされたが、あまり話題になっていないのは残念。
[導入部]
フリーライターをしている海老原誠は、去年妻の沙織を交通事故で亡くし、小学生の夏樹と父子二人でマンション暮らしだ。
誠は目下、今年三月まで勤めていた新聞社の出版局から依頼されたルポルタージュに取り組んでいる。
出版局が出している情報誌では、過去に起きた衝撃的な事件をもう一度掘り下げて検証するルポを不定期に掲載しているが、編集長が誠に指定してきたのは、戦後すぐに起きた連続殺人事件で、犯人は北川フサという女性だった。
[採点] ☆☆☆★
[導入部]
[採点] ☆☆☆
[導入部]
関東大震災から二年以上が経った。
上野の、商店街と呼ぶには歯の欠けすぎた通りの真ん中に、稲子の目指す「カフェー西行」はあった。
入口ドアには「女給募集 十九歳」という貼り紙。
中に入り、小柄な女給に案内されテーブル席に着きコーヒーを注文する。
コーヒーは苦い。
夫もこの苦いコーヒーを飲むことがあるのか。
稲子の目当ての女給は「竹久夢二の絵みたいな、いやに色っぽい柳腰の美人」。
夫の銀次はその女給の家に通っているらしいのだ。
[採点] ☆☆☆☆
[導入部]
春谷風香が高校で陸上部に入ったのは、走る以外に取柄を思いつかなかったからだ。
学力は平均レベル、容姿も人並み、そんな平凡な自分にも得意なものがあった。
走ることだ。
足の速さだけが風香の持つ唯一の取柄だった。
そんな風香も中学のクラスリレーで夏目結愛に抜かれた。
結愛はジュニアオリンピックにも出たといい、中学卒業後、陸上強豪校の清々館に進学した。
風香が入学した高幡高校も過去に何度かインターハイに選手を送り込んでいた。
[採点] ☆☆☆☆
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