福島原発事故                       2011年3月20日

発生源からの距離との関係

 放射線の場合:わかりやすく言えば、光と同じ特性を持っておりますので、発生源をひとつの裸電球と考えて見ましょう、点灯すると光は電球を中心にすべての方向に飛び出します。ここで、電球の正面に立っている人間の場合を考えて見ましょう。そしてわかりやすくするために電球の側の表面積(光の当たる面)を仮に縦横1m×1mの1uとしましょう。次に同じ表面積の人が下の図のように光源から10mと20mのところに立っているとします。(うるさい人がいるといけないので言っときますが、反射、回折、空気etcは無視しますので)
すると図のように「10mの人には10mの位置に届いた縦横1m×1m=1u分の光が当たります」が「20mのところにいる人には10mのところにいる人の0.5m×0.5m=0.25uの光」しか当たりません。すなわち10mで当たる光の量を1とすると2倍の距離の20mでは1/4になるわけです。このように距離が2倍になると明るさ(照度)は1/43倍になると1/9というように、光源からの距離の倍数の2乗に反比例してどんどん暗くなっていきます。そして放射線も同様におおよそ距離の2乗に比例して拡散し被曝量はそれに反比例して下がってゆくわけです。
しかしながら、放射性物質の場合は、空気の流れがまったくなく、また微粒子同士の相互作用もまったくないといった、たとえば真空状態で一つ一つの微粒子が何の影響も受けずにまっすぐ全方向に飛び続けるといったような現実にはありえない特殊な場合を除いて、放射線のような拡散と距離による減衰はしません。放射性物質の場合は例えるならば花粉の飛散と同様な拡散の仕方をします。さらに花粉以上に小さく軽い放射性物質の塵の飛散範囲は花粉とは比べものにならないほど拡大するでしょう。すなわち、日ごろの花粉情報でもわかるように、発生源から近いところがかならずしも飛散量が多くて遠いところが少ないという風にはならないのです。
飛散の仕方は、風の向き、風の強さそして気流や天候の状態によって刻々と変わり発生源からの距離にかかわらず高濃度の放射性物質が飛来する場所も出てくることになります。従ってこの放射性物質の場合は、その飛散場所や飛散距離を正確に予測することは非常に難しくなります。もっといえば、不可能に近いといえます。従ってこれに対処するには、発生源を中心にメッシュをかけるように(できうる限り高密度かつ広範囲に)測定器を設置して常時、被曝量と風向き・風速を監視し過去の事故における拡散パターンを参考(それぞれ地形等の条件が違うのでほとんど参考にはならないが)にすること以外方法はありません。(風向きが常に一定(?)なら風上に逃げる。)


被曝許容量の怪(あやしさ)

 1回の胸部レントゲンでの被曝量が○○mmシーベルトもあるんだからそれに比べたらほんのわずかな被曝量であり問題ありません・・・これってほんとうだろうか???これはとんでもない比較です。こんなことをほんとに正しい比較の仕方と思っていっているのであれば、その学者なり解説者は「マッタクノアホ」です。また、それがわかった上で確信犯的に言っているのであればとんでもない勘違いをした「オロカナ偽善者」

理由その1
. レントゲンやCTの場合はせいぜい数分間から30分といった一過性の放射線被曝による固定値(条件や種類によって幅はあるが)すなわち“定数項”である、一方原発事故によってこうむる被曝(特に放射性物質による内部被曝)はその被曝源を取り除かない限り時間当たりの被曝量(mSV/h)がレントゲンでの被曝量に比べてわずかなものであろうとなかろうと、時間とともに累積していく“変数項”である。従ってこの二つの量を同列に比較するのはとんでもない誤りであり科学者失格である。

理由その2.
 私なんぞはできればレントゲンやCTで放射線に晒されることによるリスクは怖いが受けなければ、病変があっても見過ごして手遅れになるかもしれないといったある種究極の選択としていやいやながらうけているのが現状であり、それによって健康で長生きしたいがために受けているのである。これは私だけではなく誰しも同じであろうと思います。さらに言えば、程度の差こそあれ自分の意思で自分の益になると思って受け入れるといった点においては、癌患者が副作用を承知で、放射線の照射を受けたり、外科手術をせざるを得ない患者が体にメスを入れ治療をするといったこととまったくおなじである。 さて、ここで先の比較をした学者や解説者は、私たちに対してあんた達はレントゲンをとったり、CTを受けたりするんだから、それに比べてとても少ない被曝量を受けることぐらい何の問題もないでしょ、そのくらい我慢してくださいよ。といっているわけで、これは、外科手術をした患者に、ちょっとしたミスであなたの顔に針が何本かさ刺さりますが、“手術のときのメスに比べればこの針は比較にならないほど細いから我慢してください、めったなことはないがもし目玉に刺さったら勘弁してくださいね。”と言ってるようなものである。 先の比較はこのような言い方と同じレトリックであり許されざるものである。益を目的とした行為と害しかもたらさない受難とを同列に比較して平気な顔をしている学者はニンピ人(ヒトデナシ)である。

肝心なのは、時々刻々累積されていくその人の“累積総被曝量”である

その人の累積総被曝量(mSv)≒{FmSv/h(福島原発による時間当たりの被曝量)+DmSv/h(日常受けている時間当たりの被曝量)}×被曝時間+{ΣPn mSv/h(CT・胸部レントゲン等の個人的被曝量の合計)}*(但し、従来自然被曝等で受けてきた量は含めておりません)・・・あくまで被曝の影響を考える上での概算であり、目安ですのでご承知ください。

もう少し簡略化して書くと

累積総被曝量(mSv)≒{原発事故被曝量(mSv/h)+日常的な被曝(mSv/h) }×経過時間+個人的被曝量

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