徳をいただく
本堂の仏具発注の為、平成19年6月に35年ぶりでスリランカに出かけました。
その旅の一日、ダンミッサラ長老〔本堂の落成式にご臨席頂いた〕にお願いして、コロンボ郊外のジャングルにある修行道場に案内して頂きました。スリランカ仏教には、お釈迦さま在世の時代〔初期仏教〕の家風が存在していると聞いていますので、それを肌で知りたく思ったからです。
人里離れた山道を辿り熱帯の雨にぬれる川沿いの参道を行くと、仏さまを祀る岩屋を囲んで三畳ほどの座禅の洞窟が幾つかありました。高い樹上には猿が啼き遊び、谷川の瀬音に合わせて熱帯の蝉が法螺貝のような声をたてています。
あいにく祭日のため修行者は麓の信者の家を訪ねて不在でした。止みそうにない熱帯の雨です。留守居の僧に暇を告げ参道を下りかけたところで、枯れ木を頭に載せ手に水筒を提げた数人の男女とすれ違いました。
ダンミッサラ長老が「あの人達は修行者に明日の朝食とお昼の供養〔お坊さんは、一日に二食〕をするために、食料を携え来たのです。今夜はお篭りし、明日の午後には仏さまの功徳を頂いて家に帰るんです。」と教えてくれました。
毎日信者が交代で、食事の支度に出向くそうです。頭には薪、手には食料を携え来て、帰りには心満ち足りて家路につく人の姿を見て言い知れぬありがたさを感じました。
そう言えば、落成式でのこと、ランジット・ウャンゴダ スリランカ大使ご夫妻は、私が用意した椅子に座りませんでした。大使ご夫妻はお坊さん方より高い床に座ることを遠慮されたのです。みなさんはお気付になりましたか。私はそのような敬虔な姿を見せて頂き有難く思いました。
このようにして法を尊び敬うことの振る舞いは、スリランカに脈々と伝承されている思いがします。
平成20年夏
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