東宮御所からのお手紙に寄せて
平成18年の秋の彼岸の21日に先師・高橋友道和尚の随身・静子刀自が92歳で浄土へ還られました。その後、彼女の遺品の片づけにおわれる日が続きましたが、きちんと整理された来簡のなかから私が忘れることができなかった手紙がでてきました。
先師は昭和51年に遷化され、同年私は住職を拝命しましたので、このお手紙をいただいた53年は既に私の代のことになります。先師が病のなかで書き上げられた「大中寺と沼津御用邸」は、残念ながら生前には間に合いませんでしたが、後に上梓後、時の侍従長・入江相政氏に直接お願いして昭和さまを始めとして東宮家や各宮様のお手元に寄贈していただきました。また、その直後、当寺の全檀家にもお配りしたことを覚えています。この本の上梓までは、私も色々とお手伝いをしましたが、そのせいでもあったのでしょう、天皇家にお配りいただいた後に郵便受けに届いた封筒の裏に印刷された「東宮大夫」の四字から、私は鮮烈な印象を受けずにはいられませんでした。しかし、静子刀自はその内容を私に披露されることなく、そのまま30年の時間が流れました。
皆さんはこのお手紙を拝見してどのように感じられたでしょうか。私はなによりも、お子たちを深い愛情で包み育まれているこの現実に感動しました。と同時に、今更ながら、天皇家とのご縁を結ばれた4代前の玄璋和尚のお徳の高さを思い知らされたような気がしております。
このお手紙を蔵の奥にしまいこむには、余りにももったいなく思われ、ここにご披露申し上げる次第です。
下 山 光 悦
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