42号巻頭カラー撮影現場

江戸市内某所。空には満ちた月がぽっかりと浮かび、白々とした光が辺りを照らしている。そんな中で、着々と進められる週刊少年ジャンプ42号巻頭カラーの撮影。桜舞う中、銀時はいつもの着物を素肌に纏い、肩には朱色の着物を掛けている。手には杯。一人月見酒といった様子をパシャパシャと撮られている。
そんな撮影風景を見学中の新八と神楽。

「……銀さんカッコイイなァ」
「カラーだからってカッコつけすぎネ。カメラ目線とかキモいアル」
「とか言ってさっからずーっとここで銀さん見てるくせに」
「新八だって同じネ。中身は胡散臭い万年金欠の白髪天パなダメダメ社長ヨ」
「そりゃ分かってるけどさ」
「リーダー、事実は時として人を傷付ける」
「ヅラにエリー!」

いつの間にか背後に立っていた桂とエリザベス。

「桂さん、いらしてたんですか」
「何やらやっていると聞いてな」
『上手くいけば、カラーに出れるかも』
「あー、桂さんは本編の展開的には有りかもしれませんけどね、エリザベスはどうかな」
「つーか俺とかぶってんじゃねェか」

ぱっと振り返れば、派手な着物の包帯を頭に巻いた男。江戸市内いたる所に張り紙が貼られている。

「うわっ!たたた、高杉?!」
「お前何しに来たアル!」
「銀時ンとこの餓鬼か」

新八と神楽を護るように桂がすっと前に出る。

「高杉、この子らに手を出すことはこの俺が許さん」
「オイオイ、俺ァ銀時を見に来ただけだ。バカ面拝んだら、さっさと消えるさ」

高杉は面白げににやにやと笑う。
が、

「って言うか、幕府の二大指命手配犯が揃いも揃って何しに来てんの?銀さんのストーカー?」
「新八、コイツら無職ヨ。暇に決まってるネ」
「あー、テロリストは職業じゃないからね。無職っていえば無職なのか。銀さんアレでも世間一般的には社長ってことになるんだよね」
「給料払ってくれないケドな」
「うーん、そろそろ本当に出ると出た方がいいんじゃない?」
「でも、コイツらよりは銀ちゃんの方がマシじゃないアルか?」
「テロリストの部下に給料とかってあるのかな?なさそうだよね。でも、養うっていうか衣食住の面倒くらいは多少みてくれるんじゃない?」
「それなら今と一緒ネ」
「それもそうか」

桂の背に隠れているのをいい事に言いたい放題の二人。
というか高杉の存在をすっかり忘れたように、給料の話で盛り上がっている。これにはさすがの高杉も呆れたような顔をした。

「テメーら、名前は?」
「えっ?志村新八ですけど……」
「神楽ネ!」
「新八と神楽な。覚えといてやらァ。この俺を無視してお喋りとはなかなか面白れェ」

ごく普通に聞かれたからとはいえ、指名手配犯に対し名前をしかもフルネームで答えてしまったことに新八は青くなる。

「いえいえ全力で忘れて頂いて結構ですっ!」
「そう、つれなくすんなよ」
「高杉」
「ククク、怖い顔すんなよ、ヅラ。こう見えて俺ァ子供好きなんだぜ?」
「メチャクチャ嘘臭いアル」
「そりゃあ、嘘だからな」
「しらっと言いますね。そういえば、さっきかぶってるとか言ってませんでした?」
「ああ、どう見たって俺の真似じゃねーか」
「どこがアル」

高杉はキッと撮影中の銀時の方向を睨みつける。

「銀時の野郎、派手な着物ってのは俺の専売特許なんだよ!そもそもなんだよ、あの前のはだけ方。似合うと思ってんのか、バカ。弛んだ腹なんざ見たくねーんだよ!まずは、あの趣味の悪りィ着物をどうにかしやがれ!」

どうやら今回のカラー扉の銀時に、特に衣裳に不満があるらしい高杉に対し、冷たい視線を向ける新八と神楽。とりあえず、派手派手しい着物を着ている高杉には言われたくないし、銀時も冬場にはあまり趣味がいいとは言えないような柄の羽織をよく着ている。

「……高杉さん、そんなことをわざわざ言いに来たんですか?」
「やっぱり暇人ネ」
「まあ、銀さんの知り合いだし、類は友を呼ぶってやつじゃないの?」
「ロクなヤツがいないネ」
「まあ、それはなんたって銀さんだし」
「それじゃあ、コイツもきっと大した事ないネ」
「……オイ」

ここまで黙って三人のやり取りを聞いていた桂だが、ついに堪えられなくなって笑い出した。

「ハハハッ、さすがの高杉といえどもこの子らにかかったら形無しだな。……ん?」
「たーかーすーぎィィィィ!」

高杉に気付いた銀時がこっちへと駆けてくるのが目に入った。

「おっと、ここまでか。そんじゃあな、新八神楽。今度会ったら遊んでやらァ」
「だから結構ですって!」

高杉はにやりと笑うと、銀時が来る前にと足早に去っていった。
一方、全速力で走ってきた銀時は辺りを見回し、高杉がいなくなっていることを確認すると、ハァと肩の力を抜いた。

「あ、お疲れ様です」
「撮影は終わったアルか?」
「ちょ、お前ら今誰と話してたか分かってんの?!っていうか、ヅラも何ぼさっと見てんだよ!」
「なに、お前の心配するようなことは何も無かったさ。なぁ、リーダー、新八君」
「いや、僕としては目一杯心配なんですけど」
「オイオイ!」
「それよりも銀時、今度は俺がカラー扉だ、覚えておけ。エリザベス、行くぞ!ん?エリザベス?エリザベスー!」
「二度と俺の前に顔見せんな!」

桂はフッと笑うとさーらーばー!と叫び、いずこへと消えたエリザベスを探しに去って行った。
銀時は二人が高杉と何を話していたのか随分と気にしたようだったが、何でもなかったと言う二人にとりあえず納得し、万事屋へと揃って家路に着く。

「っくしょん!」
「銀ちゃん、風邪アルか?」
「んー、さすがに薄物一枚じゃちょっと寒くなってきたな」
「だったら、その着物上から着ちゃったらどうです?ちょっとは温かくなるんじゃないですか?」
「いや、だってよォ……アイツと似てねェ?」

もの凄く嫌そうに眉を寄せながら言った銀時に、新八と神楽は盛大に笑った。

「やっぱり累は友に及ぶって言うネ!」
「違うって類は友を呼ぶだから!まあ、微妙に間違ってないのが怖いけど、あの人らの累が及んだら僕ら即刻打ち首獄門だよ!」
「マジでか」
「オーイ、類友とかマジで勘弁しろよ!っていうか、アイツと何話してたんだよホントに!」

新八と神楽は「内緒」とくすくす笑うと、銀時の左右に回りその手を繋いだ。

Birds of a feather flock together.
(同じ羽の鳥は集まる)

2007.09.17

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