鮮やかに新年

いつもより綺麗に着飾った人々で混み合うかぶき町。華やぐ雰囲気の中で、その真っ黒な隊服は一発で見つけられた。別にわざわざ挨拶する必要なんて、全くないんだけど、まあ、たまには気の迷いってこともある。ただ、なんて声を掛けるか、少しだけ迷った。

「沖田くん」
「旦那、あけましておめでとうございやす」
「おめでと」

ああ、そうなんだ。そう来るんだ、君は。

「ふふ」
「何か可笑しい?」
「いや、顔色一つ変えないたァ、さすがだと思いやして」
「褒められてんの、ソレ?別に嬉しかないんだけど」
「そうですかィ?俺ァ旦那のようになりてぇなァ、とか思ってるんですけどねィ」
「オススメしないよ」

そもそも根本が違うからね。俺は君のように、乗り越えたわけでも、受け入れたわけでもない。ただ、自分を誤魔化して生きてるだけだから。

「沖田くん、どーせサボり中でしょ?良かったら銀さんの作ったお汁粉食べない?」
「旦那が作ったんですかィ?」
「美味いよ」
「雑煮ならまだしも、糖尿の人間がどうかと思いやすがねェ」
「予備軍だっつーの」
「威張って言う事じゃねぇや。けど、本当にいいんですかィ?土方さんにバレたら、旦那に誘われたって言いやすぜ」
「いいよ。俺たち大親友なんだろ?」

嘘も吐き通せば本当になると言ったのは誰だったか。
結果オーライ上等。

「それじゃあ、御馳走になりやす」
「うん」

こんな新年も悪くない。

「旦那、今年も宜しくお願いしまさァ」
「……こちらこそ」

面倒事に巻き込まれるのは、真っ平御免だけどね。

また一年が始まる

2007.01.04

戻ル