たまに一家心中のニュースが流れたりするが、俺は胸糞悪くって嫌いだ。子供が小さいなら尚更だ。だってそうだろ。テメェが死ぬのに子供を付き合わせるな。子供が可哀想だから、だなんて馬鹿なことほざくくらいだったら、施設にでも預けりゃいい。そんなの子供を育てるという責任を投げ出した言い訳で、子供を遺さないことで全てを無かったことにしたいだけだろう。親なんかいなくたって子供は生きていける。
(だからって俺のようになれだなんて勿論言わないけれど)。
だけど、最近少しだけそんな親の気持ちが分かるような気がしてきた。いやいや、別に新八も神楽も俺なんかいなくたって、生きていけるのは分かってるんだけど。そうじゃなくて、もっと単純な理由。
――独りで死ぬのは淋しい。だけど、もしも大切な人が、たとえば新八と神楽が一緒だったならば。
……俺は死ぬことに安心してしまうかもしれない。地獄行き決定な俺は、アイツらとあの世で一緒には居られないけれど。それでも、閻魔様の前くらいまでは三人揃って歩いていける。――そんな馬鹿過ぎる、けれど本気染みた妄想。
ヤバイな、俺。もし、このまま二人より先におッ死んじまったら、この世に未練たらたらで絶対成仏できそうにねぇんだけど。誰かが「しつけー男はあの世でもモテねーぞ」って言ってたのにな。それよりも不安なのは、俺は新八と神楽を――。
「銀さん?」
怪訝そうに俺の顔を覗き込む新八の声で、俺は我に返った。
「どうしたアルか?」
「ん?別にどうもしねーよ」
素っ気なく言ったつもりだが、上手く言えてただろうか。新八も神楽も困ったような表情のまま俺を見ている。
「銀さん――アンタ、泣きそうな顔してます」
「え」
「私たちに言えないことアルか?」
「僕たちじゃ力になれませんか?」
嗚呼。
「「わっ?!」」
「ゴメン。新八、神楽」
両腕に抱えた二人の温かさに俺は泣きそうになった。これは俺が護らなきゃいけない幸せそのものじゃないか。なんて馬鹿なことを考えたのだろう。馬鹿にも程がある。
「銀さん」 「銀ちゃん」
俺を呼ぶ二人の声はあまりにも優しくて。
もうコイツらが居なかったら俺は生きていけないんじゃないか、とすら思った。
(ああ、だから親は子供を道連れにするのか)。
何よりもいとおしい存在だから。
2006.09.18