金時と新八

街もすっかり朝を迎えた頃、いつもならまっすぐ寝に帰るところだが、今日は新八と一緒に歩いている。俺が大家のババアと喧嘩をして部屋をおん出され、とりあえず新八の家に世話になることになったためだった。

「つーかマジでここがお前んち?」

着いた先はわりと広い敷地の純日本家屋。聞いたことはなかったが、てっきりマンションで独り暮しだと思ってたいた。ていうか実家住いだとは思わないだろ。玄関がカラカラと鳴り、なんとなく懐かしい。

「ただいま」
「あら、新ちゃんお帰りなさい」

玄関で鉢合わせしたのは華やかな柄の着物が良く似合う、なかなかの美人。
けど、どっかで見たような気がするんだけどなぁ。

「姉さん出掛けるの?」
「ええ、もう出るわ。そちらの方が?」
「電話で話したと思うけど、同じ店で働いてる坂田金時」
「どーも、お世話になります」
「初めまして、新八の姉の妙です。弟がいつもお世話になっております。私は今から出掛けてしまうんですけど、お話は聞いてますから。姉と弟の二人住いですし、気兼ねなさることはありませんわ」

お妙はにっこりと笑ってそう言うと、軽く会釈をしてその場を去って行った。
俺はそんなお妙の後ろ姿を視線で追いながら新八に尋ねた。

「なあ、おい」
「何です」
「お前の姉ちゃんってもしかして、スナックすまいるのお妙?」
「そーですよ。何か?」
「何かって、次期歌舞伎町四天王候補じゃねーか!」

歌舞伎町四天王。浄も不浄も混ざり合うこの街で、夜の理を創り出す四人の実力者。店の力よりも個人の器量によるところが大きく、人望が無いヤツはまずなれない。勿論、力の無いヤツも。それに俺たちのような闇に関わる人間も駄目だ。あくまで表の歌舞伎町の仕切り役。この候補に挙がるということは、お妙はそうとうな人間なんだろう。しかし、その弟である新八は俺の驚きには全く反応する様子はない。

「ああ、お登勢さんの後釜にとか言われてるらしいですね」

お登勢とは歌舞伎町の女帝と呼ばれるバーさんで、実は俺の住む部屋の大家だったりとかする。

「らしいですねってお前」
「別に姉さんは姉さんですし」
「そんなもんなんかなぁ。まあ、さすがに綺麗な姉ちゃんだな」
「………見た目はね」

後日、俺は身を持ってその言葉の意味を知ることになる。

突発金魂話。
まだ設定が決まってないのですけどね、思いついちゃたのでUP。
かなりありえそうな気がする設定。
て、いうか別に金魂設定じゃなくもいいんじゃね?とか思ったので↓

2006.09.07

*  *  *

「新八ィ……お妙の噂って聞いてる?」
「姉上の?いいえ、ってか噂って何ですか?」
「……なんでもよ、次期かぶき町四天王候補とか言われてるらしいんだけど」
「はぁァァァァ?!」
「いや、俺もちらっと話聞いただけなんだけどよ、史上最年少の四天王が誕生するんじゃないかとか」
「え、いや、ちょっ」
「似合い過ぎで笑っちまうよなー」
「弟の僕ですら普通に想像出来ちゃって、全っ然笑えないんですけど……」
「…………」
「…………」


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