白夜叉と呼びだしたのは俺であろうな。
銀時は強かった。それこそ、武神と呼ばれるまでにな。
だからこそ俺は銀時を利用した。
白夜叉。この名が及ぼす影響力の凄さは、あの場にいた者でなくては分かるまい。苦境に立たされる我らにとって、あの白にどれほど勇気付けられ、奮い立ったか。自然、その名はあっという間に広まっていった。虚名でもはったりでもない、歴然とした事実としてな。
アレはああ見えて、優しい奴だからな、何も言おうとはせん。
だからこそ、より一層、罪の重さを感じるのだよ。
白夜叉と最初に呼んだのはわしじゃ。
銀時は強かった。じゃが、それ以上に優しかった。
わしが白夜叉と呼んだのは別に銀時を蔑みたかったわけでも、褒め讃えたかったわけでもなか。これはわしの気休めみたいなもんでの。戦が終わればいつかは白夜叉という名も忘れ去られるじゃろ。そん時、坂田銀時という名が残ればよかと、そう思うた。
だから、わしは金時と呼ぶんじゃ。あやつが銀時じゃと言うんを聞きたくてのう。ふふ、まっこと滑稽やき自分でも笑えてくるんじゃよ。
最初に白夜叉と呼んでやったのは俺だ。
なんせ、アイツは強かった。周りのやつらから頭一つ、いや二つ三つ飛び抜けてたかもなァ。ああして、無為に生きるにゃもったいねェ腕だぜ。
ここだけの話、俺はあれほど恐ろしいもんを見たことねェな。何せ、散々天人斬り殺して血みどろのン中、それでもアイツは人として存在しようとしやがる。おこがましいというより、おぞましいというか浅ましい。
アレは人じゃねェんだよ。
人であっちゃあならねェのさ。俺と同じくな。
白夜叉と言い出したのは俺だよ。
名前に意味なんてねぇ。何となく、かっこよさ気だろ。
別に白にこだわってたわけじゃねぇよ。俺は切り込み隊長っつーか鉄砲玉だからな、白い着物の方が敵の目を引き付けるのに都合が良かった。それだけのことだ。
他がどう思ってるんだか知らねぇが、あいつらは関係ない。
俺は白夜叉なんてけったいな名前に何も求めちゃいねェよ。
白夜叉と彼が呼ばれたのは時代の声でしょう。
あの子は強かった。勿論、小太郎も晋助も類い稀な強さを持っていたけれど、銀時はそれ以上でした。
あれだけの強さは時として迫害の対象になるときもあります。それでも、白夜叉という名が、畏れの顕れだけでなく、称賛の響きを帯びているのは、ただ強いからだけではないのでしょうね。
私はこの世界にもう何一つとして関わることは出来ませんが、あの子たちの行く先がどうか幸多きものであるよう願ってやみません。