01〜05


01 万事屋

いつもの万事屋。

「銀さん」
「んー、何?新八」
「僕、銀さんのこと好きですよ」
「おぅ……え?えええっ?!いや、その、新ちゃん?!」
「銀ちゃん!私もアル!私も銀ちゃんのこと好きヨ!」
(あ、何だ。そういう意味ね)
「銀さん?」
「あー、何でもない何でもない」

万事屋の二人の子供。

「ねぇ、銀ちゃん」
「銀さんは僕らのこと」
「好きアルか?」
その答えはただ一つ。

「大好きに決まってんだろバカヤロー」

02 新八

姉上と一緒に墓参り。
それはいつもの通りだが、今日は銀さんと神楽ちゃんもいる。
午後から休みをもらおうと思い理由を話したら、一緒に行くと言い出したのだ。
僕は一向に構わなかったし、万事屋に仕事の依頼は無かった。

お墓には年に何回か行くため、荒れているという事はなかったが、それでも草が繁り始めていた。草むしりは姉上と神楽ちゃんに任せ、僕は銀さんと墓石を洗った。古い墓だからぴかぴかとはいかないけれど、藻だか苔のようなものは綺麗に無くなった。

すっかり綺麗になったお墓に、花と線香を供える。
ちらりと横を見ると、三人とも神妙に手を合わせている。

(神楽ちゃんはお母さんの事を思い出したんだと思う。だけど)

――銀さんは一体誰の冥福を祈るのだろう。

03 土方

通りを歩いていると、向こうから白髪頭が歩いてくるのが見えた。
別に挨拶する必要もないし、したくもない相手なので、そのまま通り過ぎる。カチリ。

「止めときなよ」

小さいがはっきりと聞こえた声。
俺は慌てて振り返ったが、アイツは何の素振りも見せることなく、そのまま雑踏へと消えていった。


別に斬る気は無かった。ただ、コイツと戦うならばどう動こうかと、頭の中で描いただけだった。しかし、俺は完全に負けた。
何故なら、これでもう戦ってみたいという気持ちは、綺麗さっぱり無くなってしまったのだから。

04 万事屋

坂田家の食卓1


「新八、一個ちょーだいアル」
「えー、もう仕方ないなあ、ハイ」
「ありがとアル!」
「新八ー、俺も」
「嫌です」
「……新八さ、神楽にはおかずやるのに、俺にはくんないよな」
「拗ねても駄目ですよ。満足な御飯が食べたいなら仕事見つけてきてください」
「いやいや、それとこれとは話が別だろ!」
「別じゃありませんよ。家で仕事も無くだらだらしてる大人と、外を飛び回る育ち盛りの子供じゃ、どっちがカロリーを消費するかは一目瞭然です。懸命に働いてるなら話は別ですけど」
「……………」
「何か文句がありますか」
「……アリマセン」
「新八ィ」
「何?神楽ちゃん」
「すっかりマミーあるナ」
「……言わないでくれる、ソレ。自分でも薄々感付いてるから、って何こっそり食ってんだァァァ!」

05 沖田

あの日のことを実ははっきりと覚えてはいない。
ただ写真のように幾枚かの場面が残っているだけだ。
けれど、決して忘れる事は出来ない。


人なんて斬りたくなかった。
怖くて恐ろしくて逃げ出してしまいたかった。
でも、それでは近藤さんや土方さんたちといることが出来なくなる。
それだけは絶対に嫌だった。


「やってみれば、なんてことなかったですねィ」


いつもの表情を作り損ねてぶざまな顔を晒す俺と、きつく抱き締めてくれる近藤さんに、しかめっ面した土方さん。


――もう遥か昔のような出来事。

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