組織移行

ジェシカ - 03/04/23 11:32:30
組織結合について引き続き教えていただきたく思います。消失臓器のKpは非常に高いクリアランスの化合物の場合、クリアランスの影響を受け、ひいては分布容積自体にも影響を及ぼすことがあるということでした。それでは、例えば、そのような化合物に対して、生理学的モデルを構築する場合、消失臓器のin vitro得られたKp値を使用することはできないのでしょうか?もしできないとするとどのようにすればよいのでしょうか?また基本的なことで申し訳ありません。
M Kato - 03/04/23 12:52:32
ジェシカさんへの最初の答えに説明してあります。これをヒントに自分で考えて、教科書も参考にして、勉強してみてください。その方が力がつきます。それでもわからなければもう一度質問してください。
ジェシカ - 03/04/24 16:05:54
K.Katoさん。ご指摘の通り、この前いただいた回答も照らし合わせて考えました。そうするとさらに疑問点がでてきました。”消失臓器においてKpは単なる組織中濃度と血中濃度の比ではない”という血中濃度とは循環血中濃度ですよね。Kpの定義は組織出口の付近の静脈中濃度を基準とするので理解できます。Katoさんの説明では、クリアランスが大きくなると、分布容積は小さくなるということですが、Kpの定義から考えると、消失臓器におけるKpはその臓器のクリアランスに依存し大きくなるのだから、クリアランスが大きくなると分布容積は大きくなるのではないですか?いずれにしてもクリアランスによって分布容積が変動してしまうとin vitroから求めた組織の結合性から分布容積を見積もるのは不可能な感じがします。参考本をいくつか読みましたが、うまく答えにたどりつけませんでした。若輩ものうえお許し下さい。
M Kato - 03/04/24 23:38:10
Kp値はトランスポーターによる濃縮がなければin vitroで測定した値で構いません。分布容積についていうと、これは循環血基準で考えています。肝臓1gのKp値が10とします。分布容積としては10mLです。肝抽出率が0.1として定常状態で考えると、血中濃度が1ng/mLとすると肝静脈血濃度は0.1ng/mLです。そうすると肝臓中濃度は1ng/g liverです。循環血からみればKp値1で分布容積1mLとなるわけです。代謝がなければ肝静脈側の濃度は1ng/mL肝臓中濃度は10ng/g liverすなわち分布容積10mLとなります。理解いただけたでしょうか。
ジェシカ - 03/04/25 10:18:04
Katoさん。いつも本当に丁寧に説明していただいてありがとうございます。分布容積関連であと最後に一つだけ確認をさせて下さい。Katoさんによると、分布容積は循環血基準で考えるので、クリアランスの高い化合物ですと理論的には見かけ小さくなるということでした。一方、分布容積の定義の一つにすべての臓器のKp値の和というものがありますよね。このKpというのは循環血基準のみかけのKpをいっているのであり、真のKp値ではないということですね。私のもっている教科書では混同して書いてあったので混乱しました。そうしますと、すっきりクリアです。
M Kato - 03/04/26 00:21:49
私のコメントの抽出率は0.9の間違いです。「分布容積の定義の一つにすべての臓器のKp値の和というものがありますよね。」定義ではなく、対応だと思います。この定義が書いてある本は私が持っている本の中にありますか?確認してみます。血中濃度基準の分布容積に対応させるのであれば、ジェシカさんの内容は正しいと思います。

モリモリ - 03/04/02 12:49:31
探索段階で、ある化合物のターゲットが脊髄にあり、副作用に関連するとされる脳へ移行させたくない場合についてお尋ねします。1.この場合PK的にはCSF中濃度を上げて、脳のフリー濃度を下げる戦略をとればよいですか?2.一般にCSF濃度と脳のフリー濃度は関連しないといわれますが、受動輸送のみを考慮した場合、PSA等を調整することによって、達成できる可能性があると思いますか?というのはBCSFBはBBBより、かなりleakyだと思っているのですが...
M Kato - 03/04/02 18:16:49
BBBとBCSFの膜透過性について情報をもっていないのでなんとも言えないのですが、難しい話だと思います。BCSFの面積はかなり小さいと思いますし、CSFの容積により濃度が上がるのに時間がかかるのではないでしょうか。脂溶性が高ければleakyとか関係なくなると思いますから、BBBで吐き出されて、BCSFでトランスポーターで運ばれるような薬物でないと難しいのでは。脳とCSFのdiffusionは遅いと言われてますが、CSF濃度が常時高ければ脳中濃度も高くなるでしょう。BBBの吐き出しポンプが働いていれば別ですが。
モリモリ - 03/04/03 13:09:11
回答ありがとうございました。それに関して、Clin. Pharmacokinet. 41, 691-703 (2002)のElizabethらの総説を一読したところ、一般にCSF移行のほうが脳移行に比べてまだいきやすいという印象を持ちました。直感で化合物のPolar Surface Areaを100-120A程度にするとCSFデリバリーが可能ではないかとまだ信じています。さらに何か情報がありましたら教えて下さい。
M Kato - 03/04/05 09:15:40
行きやすい行き難いとよく言いますが、移行性と滞留性を勘違いされている印象を持ちます。ある組織の濃度が高いことは滞留性が高いことで移行性でないことが多いです。直感を信じてもいいのですが、先ずモデルを組んで、直感どおりか検証して、どういう場合に標的臓器の濃度をもっていけるか考えることをお勧めします。速度論的に考えると不可能に近いことが多々あります。