薬物の消化管吸収について−評価・予測
消化管吸収の評価系およびモデルによる吸収率予測の違い
医薬品の多くは、経口剤として開発されています。消化管からの吸収が低い薬物では、効率が悪いばかりでなく、吸収の個体間差や薬物間相互作用のリスクが高まります。そのため、創薬段階から溶解性、膜透過性、P糖タンパクによる排出試験等が行われ、ラット等の動物を用いた試験も行われています。しかし、これら非臨床データから臨床における吸収率(Fa)の予測を市販ソフトウェア以外で計算したことはあるでしょうか?膜透過係数とFaの相関あるいは動物のFaとヒトのFaの相関から求めたことがある方はいると思います。では、以下の問題点に答えることができるでしょうか?
ヒト吸収率(Fa)はどのように求められているのか?
膜透過係数が、in vivoとin vitroで違っているのはなぜか?
吸収予測モデルは複数ありますが、予測性に違いはあるのか?
膜透過係数と消化管滞留性に種差がある場合、どのような影響があるのか?
生理学的モデルに展開するため非臨床データをどのように扱えばよいのか?
市販ソフトウェアの予測精度の検証はどのように行えばよいのか?
吸収を担当している人でも知っている人は、限られているという印象を持っています。こういった知識は、教科書に書かれておらず、複数の論文から知識を得、自ら計算しない限り、理解するのは難しいと思います。本セミナーでは、消化管吸収の評価系およびモデルによる吸収率予測の違いを、Excelを用いて演習することにより、消化管吸収を理解することを目的にしています。また、本セミナーの内容は、ICH-M9ガイドライン「Biopharmaceutics Classification System BCS に基づくバイオ ウェーバー」の理解にも有用と思います。
セミナー内容
1.消化管吸収について
2.吸収率(Fa)の評価
マスバランス試験による評価、バイオアベイラビリティからの評価
3.In vivo評価 effective permeability(Peff)
バルーン法による評価
4.In vitro評価 apparent permeability(Papp)
経細胞輸送による評価
5.Amidonの3つのパラメータ(Absorption number(An), dose number(Do), dissociation number(Dn))
6.吸収率の予測(演習)
Peff、Papp、An、Do、Dn、Faの計算
one-compartmentモデル、multi-compartment モデル、tubeモデルによるFaの計算
7.P糖タンパクの吸収に及ぼす影響